従業員の入社時には会社と従業員の間で雇用契約書を取り交わす義務があります。そしてこの内容に添って従業員は働くことになります。しかし、この契約書に書かれる内容というのは主に労働条件についてだけです。
ということは会社と従業員の決め事はこのA4用紙1~2枚の内容と、あとは労働法令に定められていることだけになります。
そして労働法令は当然労働者のために作成されているので会社を守ることは一切ありません。
就業規則は会社が独自に決められるルール
就業規則は法律には勝てませんが、労働契約書と同等の効力があります。ですから就業規則を適正に周知していれば、その内容は労働者が必ず守らなければならないものになります。
逆に変な就業規則を作っていれば、それもルールですから会社はそれを守らないといけなくなります。これがどっかから持ってきた就業規則の怖い所です。
例えば就業規則のひな形をHPなどから持ってきて「うちの就業規則だ!」としたとします。
その内容が、例えば「休職期間は3年間とする」と書いてあったとします。
そうすると従業員が私傷病で休職を申し出た場合、3年間会社はその労働者を雇い続けないといけない義務になるのです。もしそこで「休職期間は6か月とし、休職期間終了時に原職に復帰できない場合は自然退職とする。」としていたならば、6か月経過した時点で必然的に退職していただくことができます。
要はひな形を使ってもいいけど、どこを直すべきなのか、どのくらいが適正なのか、どういう言い回しが有利なのか、などを専門的な知識をもって総合的に判断することが出来なければ、就業規則があるために会社は不利益を被ることが多々あるということなのです。
専門家に頼んだ就業規則であれば、一文一句から会社に有利に定めますので会社を守ることが出来ますし、また民事上争いごとになったとしても就業規則に定めてあり、その通りに対応すれば、訴訟されても勝訴することが可能になります。
そもそも就業規則がなければ100%敗訴
今の世の中インターネットやSNSの広まりで情報はあふれています。ちょっと会社の労務管理がおかしいと感じると労基署に駆け込んだり、労働組合(ユニオン)に加盟して団体交渉を申し込んできたりすることは当たり前のことになってきています。
そういった時に問題社員がいて、一般的に許されないように思われる問題行動を起こしたので、会社はそれを許さず解雇したとします。そこには適正な就業規則はありません。でも社長はそれは一般的に考えても解雇されても当然だと考えるでしょう。
しかし、この戦いは100%会社が負けてしまいます。
何故なら労働契約法第16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とあります。
この客観的に合理的な理由とは就業規則のことを指します。要するに就業規則にその定めがないから、解雇は無効とされるということです。
ですから就業規則があって初めて訴訟を争うことができるのです。ない場合、または適正でない場合はそもそも最初から負けることが決まっているのです。
従業員が10人以上いれば就業規則は義務だが…
労働基準法上は第89条に「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、……就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」と定められています。
法律上の義務は常時十人以上雇った場合に必要となっていますが、従業員が一人でもいれば、労使トラブルが起こる可能性はあります。従業員が増えればそれだけ労使トラブルのリスクが比例して増えるだけです。
ですから、会社を経営して守っていくためには、一人でも従業員がいるのであれば就業規則は適正に作るべきなのです。
では就業規則を作っていればいいのか?
就業規則の必要性は分りました。はい、専門家に頼んでしっかりしたものを作ってもらいました。これで万全ですね!
という訳にもいかないのが就業規則です。
作ったあとの運用を就業規則に則って行うことが、これも非常に重要なのです。
従業員が就業規則を守る義務があると同時に会社も就業規則を守る義務があるのですから!
ですので、まず就業規則の重要性に気づくことが最初の一歩、そして専門家に頼んで作成することが第二歩、そしてそれに従って運用していくことが最後の一歩なのです。
ここまでできれば会社は安全に、そして健全に発展していく土台ができたと言えるのです。
最後まで読んでいただき、就業規則の必要性を感じられた事業主様、是非お問合せください。